サラシア属植物とは
サラシアは、デチンムル科(Hippocrateaceae)のSalacia(サラキア)属植物を素材として開発された健康食品素材の一般名称で、属名Salacia の日本語読みに由来しています。サラシア属植物は、インドやスリランカをはじめ、タイやインドネシアなどの東南アジアおよびブラジルなどの熱帯地域に広く分布し、約120種が知られています。薬用に供されるほかに、建材として利用する場合や果実を食用にする種類もあります。スリランカ、インド、タイなどに多く自生するサラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア オブロンガ(S.oblonga)およびサラシア キネンシス(S.chinensis(S.prinoides))などは、つる性の多年生木本(写真1)で、成木では幹の太さが20cmを超えるものもあります。サラシア レティキュラータ(S.reticulata)はインド南部やスリランカで使用されるタミル語で“Koranti”(コランチ)、スリランカのシンハラ語で“Kothala Himbutu”(コタラヒンブツ)、梵語であるサンスクリット語で“ekanayakan”(エカナヤカン)と呼ばれ、また、サラシア オブロンガ(S.oblanga)はタミル語で“ponkoranti”(ポンコランチ)と呼ばれています。最近では、サラシア属植物を構成素材とした健康食品にこれらの呼称をつけている場合がみられます。
サラシア属植物の根や幹は、インドやスリランカの伝統医学であるアーユルヴェーダおよびタイやブラジルの伝承医学などにおいて天然薬物として利用されています。例えば、スリランカの「Medicinal Plants in Ceylon」などの薬物書には、サラシア レティキュラータ(S.reticulata)の根皮は、リウマチ、淋病および皮膚病の治療に有効であるとともに、糖尿病の初期の治療にしばしば用いられると記載されています。またスリランカでは、食事の際に、太い根や幹をくりぬいたコップ(写真2)に水や酒を入れて飲むと、糖尿病の予防になると伝えられています。インドでは、サラシア レティキュラータ(S.reticulata)やサラシア オブロンガ(S.oblanga)の根が、リウマチ、淋病、皮膚病および糖尿病の治療に用いられています。また、サラシア キネンシス(S.chinensis)はS.prinoidesと同一植物であるといわれており、インドや中国およびタイ、インドネシアなど東南アジアに広く分布しています。一方中国伝統医学では、S.prinoidesはサラツボクと称され、リウマチ性関節炎、腰筋の疲労、体力の虚脱や無力感の改善に用いられています。タイにおいてはサラシア キネンシス(S.chinensis)の幹の煎じ液が緩下や筋肉痛の緩和に良いとされていますが、糖尿病や肥満症の治療に用いられることはありません。
【写真1】サラシア
【写真2】サラシアの根からできているカップ