会長挨拶

 サラシア属植物(以下サラシアと称する)は、糖尿病やリウマチ、皮膚病をはじめとする諸疾患の治療薬として、インド・スリランカの伝統医学アーユル・ベーダにおいて重用されてきたつる性の植物です。1997年、根茎のエキスから抗糖尿病作用の科学的根拠となるαグルコシダーゼ阻害活性成分が発見され、その活性強度が汎用されている抗糖尿病薬と同等であったことから、発見当初より国内外の注目を集めました。その後、同成分とαグルコシダーゼとの結合様式がX線解析により解明され、さらに、新たな活性寄与成分および有用性と安全性について多くの知見が蓄積され、現在では、最も科学的エビデンスの充実した機能性食品素材の一つとして評価されています。

 社会には機能性食品が氾濫していますが、その質や効果は玉石混合です。残念ながら、表示されている効能を担保できていないものも少なくありません。このような状況のもと、本協会は、サラシアに関する正しい情報を会員が共有するとともに、同植物を用いた真に有効な機能性食品の健全な育成を共通の目的として、2012年に発足しました。本協会ではサラシア含有製品の品質を担保するために、大学研究室との協業により、原料と製品双方についての規格基準を策定しております。2008年からは毎年“サラシア属植物シンポジウム”を開催し、新規機能、安全性等に関する新しい情報の共有に努め、さらに2018年には、サラシアに関する学術成果、知見等をまとめた単行本“大地からの贈り物 サラシア”を編纂いたしました。この間、会員企業の努力により、特定保健用食品の許可および複数の機能性表示食品の届出に至り、現在、サラシアは、糖尿病の予防にもつながる“食後の血糖値の上昇抑制作用”を有し、使用実感に優れた機能性食品素材として確固たる評価を得るに至っています。

 サラシアには、抗糖尿病作用に加え、天然物ならではの多種の成分が組み合わさることによる多様な機能性も見出されており、さらなる研究の進展が期待されるところです。本協会ではこれを支援するとともに、真に有効な機能性食品の創製を通じて国民の健康・長寿に資することができれば幸いと考えるところです。

2018年11月

サラシア属植物普及協会会長

村岡 修(近畿大学名誉教授)